春(プリマヴェーラ)の解説
ボッティチェリの作品に登場する女性たちは、女神ばかりです。
作品「春」では中央にいるのがヴィーナス、左で輪を作るのは「愛・貞節・美」を象徴する三美神です。
右側には2人の女性がいますが、これは同一人物であり、クロリスが西風の精ゼフュロスに息を吹きかけられ、花の女神フローラへと変身する劇的なシーンを表しています。
「春(プリマヴェーラ)」はメディチ一族の一人、ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコの結婚を祝って描かれたと考えられています。
メディチ邸では寝室の隣の部屋に飾られました。
ボッティチェリはこの作品で神話を題材に選びました。
神話がほとんど主題として取り上げられなかった当時、この選択は画期的なことでした。
神話画という新たなジャンルの扉を開けた先駆者といえるでしょう。
すでに遠近法は生まれていましたが、ボッティチェリはこの技法に関心を示しませんでした。
したがって、作品は平面的で奥行きはあまり感じられません。
また、人物も優美ではあるものの、人間らしさは見られないのです。
ボッティチェリが重視したのは、単なる写実性ではなかったのです。
物語のワンシーンを叙情性豊かに書き上げたそれは、文学的な雰囲気さえ漂うといえるのではないでしょうか。
ヴィーナスの誕生の解説
ボッティチェリは明暗や遠近法ではなく、はっきりとした線描で流麗に表現することにこだわりました。
ヴィーナスの髪も1本1本を再現するかのごとく、丁寧に書き込まれています。
ヴィーナスの誕生は、天の国から「愛」という贈り物を持ってきたヴィーナスが、我々の国の岸辺へと漂い着いた姿となっています。
輝くばかりの裸身を恥じらいの仕草で隠した女神は、帆立貝の貝殻に乗ってゆったりと波の上を移動していきます。
この作品は、メディチ家より発注され、制作されたものとされています。
現在は、フィレンツェのウフィッツィ美術館が所蔵し、展示しています。
東方三博士の礼拝の解説
これはキリストの誕生を祝福するという聖書のエピソードに基づいた作品です。
ですが、ボッティチェリはここにメディチ家の人物を登場させています。
聖母の左がコジモ、左端にいるのが青年のロレンツォです。
また、右端でこちらを見ている男性はボッティチェリ自身なのです。
神秘の磔刑の解説
左上の神は十字架の楯を持った天使たちを送り、右側で火のついた松明を投げる悪魔と戦っています。
中央ではイエスが十字架にかかっています。
イエスの足下には、十字架の木にすがりつくマグダラのマリヤがいます。
右側の天使は、右手に剣をもって、左手で動物の足をつかみ、打ち付けようとしています。
神秘の降誕の解説
ボッティチェリ、晩年の代表作『神秘の降誕』です。
ボッティチェッリは、人生の晩年にあって、すべてがひっくり返るようなフィレンツェの動乱期に遭遇したのでした
。
創作意欲を失い、活動も僅かになってしまいます。
そのような時期の作品が、この「神秘の降誕」です。
神秘的なキリスト降誕に天使たちが絵画の上で踊って、この世と天国のとの喜び祝いの場面を描いています。
キリストの降誕の洞窟は、白い布で覆われたベットを中心に、右の聖母は幼子を熱愛し瞑想にふけ、左にヨセフが座し頭を抱えています。
牛やロバもキリストの降誕にの背後で参加し、これはユダヤ人と異邦人の伝統的な出来事です。