伝聞法則、伝聞証拠禁止の原則とは、定義を解説


事例
警察官がAに対して、傷害罪の疑いで捜査を開始しました。
Aが公園で、Bと口論の末、手近にあった材木でBの顔面を殴打し、重症を負わせた疑いです。

警察官は実況見分によって犯行現場から血に染まったシャツの切れ端などを発見しました。
また、その公園で散歩をしていたCが犯行状況を目撃していたとの情報が入ったので、警察官は、Cにつき目撃内容を聴取し、供述調書を作成しました。

その後、事件送致を受けた検察官も、Cを取り調べたところ、Cの供述は警察官が作成した供述調書とほぼ同じ内容であり、その供述を長所に録取しました。

検察官は傷害罪の疑いで、Aを起訴しました。



裁判では、被告人の有罪立証については、検察官が挙証責任を負います。
有罪判決を得るには、裁判所の心証が、通常人ならば、誰もが疑いを差し込まない程度に真実らしいとの確信に達することが必要です。
本件は、傷害罪ですから裁判員裁判の対象事件ではありませんが、裁判員裁判の場合も同様で、検察官には、合理的疑いを超える証明が求められるのです。

事例の公判において、検察官は、犯行に用いられた材木などの証拠物とともに、犯行を目撃したというCの供述調書につきその証拠調べを請求したとします。

裁判所は、この供述調書に証拠能力を認め、証拠調べをしてよいのでしょうか。

結論をいうと、現行法の下では、原則としてCの供述調書には証拠能力が認められません。
刑訴法320条1項は、
「台21条乃至第328条に規定する場合を除いては、公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、または公判期日外における他者の供述を内容とする供述を証拠とすることはできない」
と規定しています。

分かりにくい規定ですが、事実認定のもとになる事実をその体験者自身が公判廷で供述せず、他の方法でその供述が公判廷に提出された場合には、これを伝聞証拠といい、証拠として用いることはできない、すなわち証拠能力を否定するというのです。
一般にこれを伝聞法則と呼びます。
伝聞法則は、伝聞証拠禁止の原則とも言われます。


伝聞証拠には、本来の供述が、
「書面の形で示される場合」
と、
「他人の供述により媒介されて間接的に示される場合」
の2つがあります。
どちらも、本来の供述となっている事実の真実性を証明するためにこれらを証拠として用いることは、原則として許されません。

書面で示される類型としては、供述書と供述録取書とがあります。
たとえば被害届のように供述者自ら作成した書面が前者、参考人の捜査機関に対する供述調書のように、第三者が供述者の供述を録取した書面が後者です。

犯行を目撃した者がその模様を日記に書いたとします。
この者が公判廷で自ら証言をしないで、この日記が提出された場合、供述書としてこれが伝聞証拠となります。
あるいは、犯行の目撃者が警察官や検察官による取調べを受けて、その目撃状況を述べた場合、その供述が記載された供述調書も同様です。

もうひとつは、体験者以外の者が体験者から聞いた話の内容を公判廷で供述する場合です。
伝聞供述と呼ばれます。

犯行を目撃した甲が直接、公判廷で証言せずに、甲からこの話を聞いた乙が公判廷で、「甲は私に目撃した犯行状況を語りました」としてその具体的内容を証言する場合、この乙の供述が伝聞証拠にあたります。

したがって、この事例におけるCが捜査機関の取調べを受けて作成された供述調書は伝聞証拠となり、原則として証拠能力となり、原則として証拠能力が否定されるのです。


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