日本の法人税は高いのか、税率を引き下げる必要はあるか


法人税を納付している法人は、1970年代前半には全法人の60%台後半でしたが、80年代前半に50%を切りました。
現在では3割未満となっています。
抜け目のない社長は、家族従業員の給与などを操作して、税務上は合法的に欠損法人にしていたりするのです。
日本の大部分の企業にとって、法人税の負担率は0なのです。
法人税について議論するのであれば、まず念頭に置くべきは、この数字です。

しかし、納税している企業にとっては重い負担だろう、という指摘もあるでしょう。
そして、実効税率という数字も持ち出されることになります。

これは、法人税等の課税所得に対する負担率です。
法人税等とは、国税である法人税と地方栄である住民税、事業税の合計をいいます。
欧州諸国やアジア諸国の多くが20%台であるのに対して、日本は34.62%であって、重いとされています。


重い法人課税は、日本企業にとっての「6重苦」の1つであり、国際競争力を低下させる大きな原因だというのです。
法人税減税が叫ばれる根拠は、ここにあります。
法人税減税が議論される際、この数字はひんぱんに持ち出されます。

では、法人税の負担は、本当に重いのでしょうか。
それを確かめるために、いくつかの企業について、13年3月期の決算データによって、「法人税等」の「税引前当期純利益」に対する比率を計算してみると、結果は下記のようになっています。

・トヨタ自動車:8.1%
・三菱UFJフィナンシャル・グループ:14.6%
・三菱重工業:16.8%
・日産自動車:20.4%
・本田技研25.7%

このように、実効税率の数字に比べると、かなり低くなっています。
そうなる大きな理由は、課税上の利益が企業会計上の利益よりかなり圧縮されていることにあります。
三菱UFJやトヨタの場合は、繰越欠損金の影響が大きくなっています。
日本の法人税制では、益金から控除しきれない損失は、9年間にわたって繰り越すことが出来るとされています。

日本の銀行は、90年代に生じた不良債権の処理で、巨額の損失を計上しました。
そのため、長期にわたって法人税を払っていませんでした。
三菱UFJは11年3月期から法人税の納税を再開しましたが、いまだに負担率は低いのです。
トヨタの場合も、リーマンショック後に巨額の損失を計上したことの影響があります。

このようなことは、個人所得に対しては、原則として認められていません。
そう考えると、無条件に認めることには抵抗があるでしょう。
損失が経営の失敗による場合はなおさらです。
つまり、本当に必要なのは、法人税の減税ではなく、増税なのです。


決算書上の法人税負担率が実効税率よりかなり低くなるもう1つの大きな理由は、受取配当を益金に参入しないという措置です。
この措置は、二重課税防止のためのものとされています。
配当は法人税を負担した後の利益から支払われます。
だからそれに課税すると二重課税になってしまうというのです。
理屈の上では確かにそのとおりであって、同じ制度が外国にも存在します。

しかし、データを調べてみると、欠損法人も約4.3兆円もの配当を支払っているのです。
これは、法人税を負担していません。
それが別の法人によって受け取られると、そこでも課税されない。
結局一度も課税されないことになります。

また、09年4月からの年度について、外国子会社からの配当も益金も算入しないよう制度が改革されました。
日産や本田の負担率が低いのは、このためと考えられます。

日本の大メーカーは生産拠点を海外に移しています。
これによって日本国内の雇用が失われることがしばしば問題視されますが、それだけでなく、日本の法人税収も失われるのです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です